「反転授業」と「MOOC」の根本的な違いとは〜加藤大氏に聞く


 

 評論家より実践者を増やしたい

——反転授業を実践する人は全国的に増えているのでしょうか。

「現在、日本の大学では約20校が反転授業を取り入れています。武雄市や近畿大学付属高校の実践がマスメディアで報道されたおかげで、反転授業の認知度はこの半年ほどで飛躍的に高まりました。私も登録しているFacebook上のグループ『反転授業の研究』には現在、1300名以上のメンバーがいます。もっとも、投稿内容から判断するとグループ内の実践者は100名もいないかもしれませんが」

——考え方には共感しているけれど、いざ実践するとなると方法が分からないという人が多いのかもしれません。

「iPhoneで自分の講義を収録して、YouTubeで公開して、授業で演習をするだけですよ(笑)実際、ある先生は誰もいない教室で、ビデオカメラの録画ボタンを自分で押してから黒板の前まで歩いてきて収録した講義を、そのまま宿題動画にしています。ICTリテラシー、ファシリテーションスキル、インストラクショナルデザイン(学習効果を高めるための授業設計)など、気にし始めるときりがありませんが、どれも程度問題です。評論家にとどまるのではなく、まず1度やってみてほしいです」

——完成度の高い動画を作る必要はないのでしょうか。

「宿題動画を制作する資源が豊富にあるなら、完成度の追求を否定しません。限られた資源で反転授業を導入するなら、何よりも授業の再構築に資源を投入すべきです。教室で『相乗的な学習の動機づけ』を生むことができれば、宿題動画を視聴した学生は信頼できるレビュアーに成長します。さらに学生自身を宿題動画の制作者として参画させることができれば、教員は授業設計に一層注力できるわけです」

——MOOCなどの優れた講義映像を反転授業に転用できるのも便利ですね。

「講義映像をそのまま活用する方法もありますし、お手本になるような映像を見れば、宿題動画を効率的に制作できるはずです。教員であれば、優れた講義を見て『これを宿題動画に転用しよう!』と考える前に、『自分もこんなふうに教えたい!』と感じる方が圧倒的に多いのではないでしょうか。杞憂とは思いますが、もし反転授業を実践するすべての教員がMOOCの転用しかしなくなったら、次世代のMOOCの担い手がいなくなってしまいますし、自分で授業をしたいという感覚も持ち続けてほしいです」

――最後に今後の取り組みについて聞かせてください。

「実は今年5月に独立し、反転授業専門の会社を立ち上げる予定です。東京の神楽坂に『1500円だけ握りしめて来い!』と謳っている居酒屋があります。反転授業を実践したいけど不安に思っている方に、私も同じように声を掛けたいです。さすがに1500円ではお受けできませんが、反転授業の普及のためなら採算度外視で支援させていただくつもりです」

(文:荒木勇輝、写真:吉田亮人)

【プロフィール】
加藤氏プロフィール写真
加藤大(かとう・だい)
1972年千葉県生まれ。早稲田大学在学中に、リクルートの結婚情報誌「ゼクシィ」の営業支援に携わったのち、シニアマーケット専門のコンサルティング会社を起業。トランスコスモスでWebマーケティング事業、ライトワークスで企業向けeラーニング事業を担当し、2012年8月から現職。2014年5月に、反転授業の支援サービスを専門とする法人を設立予定。
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