「ISAK」が求める生徒像とは〜小林りん氏に聞く

 本当にすごい子たちが来てくれた

豊かな自然の中にある校舎(長野県軽井沢町)

豊かな自然の中にある校舎(長野県軽井沢町)

——実際に入学する50人はどのような構成ですか。

「当初の予定通り、海外に住んでいるハーフの方も含めて日本語を母国語とする人が約3割です。サマースクールでも色々試してみましたが、3割5分を超えると休憩時間などに日本語で話してしまうんです。地域で見ると約15国で、やはりアジアを中心に環太平洋の国々が多いですね。中にはソマリアから入学するという子もいます」

——狙い通り、リーダーになるための種を持っているような生徒をとれましたか。

「よくこんなすごい子たちが来たなという感じです。例えば、台湾で有名な私立校で成績もオールAという男の子が、サマースクールがすごく良かったので転校したいと言って、全額自費で来てくれます。奨学金対象の生徒では、インドのアウトカースト(*1)出身の、非常に優秀でカリスマ性のある女の子がいます。彼女は当初、パスポート自体が存在しないと言われたのですが、1年がかりでパスポートを取得して昨年のサマースクールに参加してくれました」

——日本人の生徒たちの雰囲気はどうですか。

「日本人の子たちも優秀ですよ。有名なディベート大会で入賞している子、科学分野の国際大会に出場した子、中高一貫の進学校を中退して来てくれる子など、多才な顔ぶれです。やはり新設校なので、チャレンジ精神旺盛な子が多いようです。今後、日本語でも応募できるようにすることも検討中です。エントリーの段階で英語力が足かせになるのは望ましくないからです」

——秋入学ですから、中学卒業後に半年間頑張って英語を勉強することも可能ですよね。

「はい、頑張れば可能ですね。相当頑張ればですけど(笑)それに入学してから苦労するのも人生勉強だと思います。私自身も高校1年までは国内の学校で、その後にIBのプログラムを持つカナダの高校に留学したので、向こうに行ってから英語を身につけようとしてすごく苦労しましたが、それも良い勉強になりました」

——ISAKの卒業生には、やはり東大や京大などではなく海外の大学に進学してほしいですか。

「その子自身が決めることなので特にどこに行ってほしいというのはないですが、私たちのところに来る時点で、日本人でも国内の大学の偏差値にはあまり興味がない子なのだと思います。そのうえ9月入学で6月卒業なので、基本的には海外の大学への進学を考えるでしょうね。もっとも、慶応大学などが秋入学を始めますし、東大や慶応が変わるだけでも入学時期の問題はかなり変わってくるかもしれませんが」

——そもそもISAKを作る場所は中国やインド、シンガポールなどでも良かったかもしれませんが、なぜ日本に作るのですか。

「前職ではフィリピンで働いていたので、フィリピンで作った方が安かったんじゃないの?と言われることもあります(笑)1つは、私自身も日本人なので、こういう学校を作ろうと思った時に、日本にこそリーダーと呼べる人が不足しているんじゃないかと考えたこと。もう1つは、例えばフィリピンに作ったとして、何百万円も授業料を払って人が来てくれるかどうかです。森林があって雪も多い軽井沢はアジアの中のスイスのようなイメージですし、そこに全寮制のスクールを作るのは経営的にも良いと思いました」

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*1: インドのカーストにおいて「ヴァルナ」と呼ばれる4つの分類の外側に置かれ、差別されている人々のこと。

 



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