夢が見つかるまでは勉強しろ!〜Tehu氏に聞く

 

 中でレベルを上げるのが理想の学校

——東大の入試の仕組みそのものが自分にはなじまないとも発言されていますね。

「僕は数字だけで判断するのが気に入らないですね。東大のアドミッション・ポリシーには色々と立派なことが書いてありますけど、結局は一発勝負で学力を数字で判断するわけだから、うそをついている。でもそういう基準で判断されたい人もいるから、学力入試自体をやめるべきではないと思っています」

——東大では推薦の導入など入試改革の議論も進んでいますが、どのように見ていますか。

「ダサいですね。むしろ『うちは数字で判断します』と言って、徹底的に学力の高い人を集める方が良いと思います。東大も灘もそうなんですが、運営側がすごいわけじゃなくて、入ってくる人がすごいだけでしょう。普通の公立校と生徒を入れ替えたらつぶれてしまうかもしれません」

——先日亡くなった「銀の匙」の橋本武先生のように、灘校にはすごい先生が多いというイメージもありますが。

Tehuさんが通う灘中学校・高等学校(神戸市)

Tehuさんが6年間通った灘中学校・高等学校(神戸市)

「入り口で優秀な人を集めるのではなく、学校の中でレベルを上げるのが本当の教育ですよね。橋本先生は灘の中でそれを実現されたんだと思います。今の灘にも良い先生はたくさんいますが、優秀な生徒が自然に入ってくるようになったので、システムが出来上がっている感じはします。この学校でも8割くらいが予備校に通っていますし、実際には予備校で機能を代替できる部分も少なくないでしょうね」

——では、Tehuさんにとって理想の学校はどういった学校なのでしょうか。

「教育でどこまでやるべきかは難しい問題ですよね。人間としての完成を目指すのか、途中まで学校で育ててあとは社会で鍛えるのか。いずれにしても、保守の中の保守と言える教育業界で、チャレンジを続けているところは応援したいです。あえて日本の学校に話を絞ると、僕がすごいと思うのは、広尾学園(東京都港区)と品川女子学院(東京都品川区)です」

——2校のどういった部分がすごいと感じますか。

「広尾学園の入学試験はそれほど難しくないらしいですが、卒業して出てくる人間がやばいですね。高2で大学レベルの数学の研究をするとか、学問という分野では圧倒的だと思います。品川女子は、女性が幸せに生きていくための教育を重視している学校です。大学に行く、家庭を持つ、キャリアウーマンになる、どの道にも進めるようにしていて、偏差値も数年間で20くらい上げています(*2)」

——理想の学校というと日本では米国や北欧を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、なぜ国内の学校に絞ったのでしょうか。

「事情が全然違いますからね。日本の教育は台形型でみんなで持ち上げようとしますが、米国の教育観は真逆で、優秀な人間を伸ばせばいいというものです。スラム街があるのは仕方ないと割り切ってしまう。僕のいとこは米国の高校に通っていたんですが、先生が校内集会で『この学校ではドラッグを使用している人が25%以下です。素晴らしいですね!』と言ったそうです。州の公立トップ校でですよ」

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*2 「ダイヤモンド・オンライン」の連載記事では、品川女子学院の躍進や漆紫穂子校長の教育方針について詳しく紹介されている。ウェブサイトURL http://diamond.jp/articles/-/44703

 



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