「反転授業」と「MOOC」の根本的な違いとは〜加藤大氏に聞く

 

 小学校で反転授業を導入すると…

——今後は小学校から高校でも導入が進むのでしょうか。

「佐賀県武雄市が2014年度から、市内のすべての公立小学校で導入するニュースが注目を集めていますね(*1)。小学生全員にタブレット端末を配り、算数と理科の授業で反転授業を試みるそうです。宿題動画を教育サービス会社に委託して制作しています。算数は学習塾事業などを手がけるワオ・コーポレーション、理科は科学雑誌『Newton』のニュートンプレスに依頼したと聞いています」

——武雄市の事例で成果が出れば大学以前の学校でも導入が広がりそうですね。

「教育段階は違いますが、反転授業を推進している私にとって武雄市の先進的な取り組みはとても心強いです。一方で、教員の主体性をいかに担保するかが大きな課題だと思います。特にベテランの教員は自分なりに築いてきた授業のやり方をそれぞれ持っているはずなので、そうした方に一律に動画を押し付け、授業の内容が縛られるような状況に陥らないことを祈っています」

——教員が能力を十分に発揮できなくなる可能性もあるということでしょうか。

「反転授業は本来、現場主導のボトムアップ型で構築されてきた教育制度です。サルマン・カーン氏は『先生たちはテクノロジーによって、教室をより人間的なものに変えた』と表現しました。トップダウン型で反転授業を導入する場合も、テクノロジーに頼るのではなく現場の意見に耳を傾け、宿題動画のメンテナンスやカスタマイズを迅速に実行できるようにすることが重要だと思います」

——家庭環境によっては自宅で宿題をすること自体が難しいかもしれませんね。

「武雄市のように税金を投入してタブレット端末を配ることができるのは稀でしょうね。小学生にパソコンやスマートフォンの個人所有を期待するわけにはいかないので、大学生と比べて導入のハードルが高いのは事実です。一方、教室では端末を使用しない授業設計も十分可能なため、学校に電源や無線LANを確保する設備投資は必要条件ではありません」

 

flippedclassroom_history

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*1: 武雄市の取り組みについては、Facebookページ「武雄市からの教育改革」に詳しい。
URL: https://www.facebook.com/pages/武雄市からの教育改革/118456668343331?fref=ts

 



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