民間出身教員が成果を上げる条件〜松田悠介氏に聞く

 

 「理想が建前にしか聞こえなくなる時期がある」

ーー1期目は学校現場になじむのに時間がかかったフェローが多いと聞きました。

「1期目についてはわれわれも反省している点があります。先ほど教育委員会に営業するという話をしましたが、教員の派遣は学校現場の理解もないとうまくいきません。最初はそれが十分でなかったので『学校のことを分かっていないのに自分は優秀だと思っているやつが来た』と捉えられた面があったのだと思います。現在は校長先生とも事前にお話して理解してもらえるように努めていますし、2期目のフェローの中には赴任したばかりの1学期のうちからすでに高い評価を得ている人もいます」

「TFJでは合宿形式で計250時間の赴任前研修をしています。初年度は想定以上に時間がかかりましたが、生徒指導力や学級経営力はトレーナブル(訓練によって習得が可能)だと考えています。現場での経験年数と指導力の高さは必ずしも比例しません。現場に入ってから、徹底して改善に改善を積み重ね、指導力を向上させていく必要があります」

TFAが理想とする教師像が集約された「TEACHING AS LEADERSHIP」

TFAが理想とする教師像が集約された「TEACHING AS LEADERSHIP」

——赴任したばかりのフェローからはどのような声が聞こえてきますか。

「現場はとにかく忙しいですから、教員は思った以上に大変だったという声が多いですね。もちろん同僚との人間関係に悩む人もいます。赴任時にはどのフェローも教育を良くしたいという思いを持っており、われわれも『ICTの活用や、先進的な教育実践を組み込みながら、厳しい状況にいる子ども達に変容をもたらす指導をしていくんだ!』という理想を掲げているわけですが、そうした理想が建前にしか聞こえなくなる時期があるようです」

——個人差もあると思いますが、そういった時期はいつごろ訪れるのでしょうか。

「1年目の夏休みが終わって、2学期に入ったくらいですかね。1学期を走り抜けてみて色々と考える機会があり、理想と現実のギャップに悩むのだと思います。われわれは派遣したフェローに対してコーチングの機会を定期的に設けたり、レポートの提出を課したりしているのですが、そうしたTFJのサポートを負担に感じる人もいるようです」

——厳しい時期を抜け出すためのきっかけになるのは何ですか。

「それは教室がすべてですね。子どもたちが良い笑顔をしていれば、同僚や保護者との関係構築も自然とうまく行きます。逆に、どれだけビジョンがあっても生徒指導がうまくいかなければ、同僚や保護者からは不安に思われてしまいます。生徒指導に自信を持ったフェローは厳しい状況でも改善していくことができます」

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