「闘うワークショップ」のつくり方〜上田信行氏に聞く

 自分の境界を広げる「learning4.0」

——学びを語るうえでのキーワードとして「プレイフル(playful)」という言葉を一貫して使っておられますね。

「僕は自分の学びをデザインするには2つの要素が必要だと思っています。1つは『プレイフル・スピリット』で、物事に対してワクワクドキドキし、情熱的になれる精神。これは学びや仕事を楽しみながら進めていくためのエンジンになります。もう1つは『リフレクティブ・インテリジェンス』で、直訳すると『省察する知性』。これがあれば自分のやってきたことを振り返り、必要に応じてブレーキをかけたり、コントロールしたりすることができます」

——上田先生と東大の中原淳先生との共著『プレイフル・ラーニング』は、ラーニングデザインの歴史を辿る意味でも興味深かったです。

「ありがとうございます。最近、教育関連の小さなサークルの中では知ってくれている人も増えたんですけれど、もっと広くプレイフルという考え方やふるまいが広がるといいなと思っています。憧れのそばに行こうとか、もっと自信を持っていいんだよとか、プレイフルな生き方をしようとか、今話しているようなことをたくさんの人に伝えたいんです」

——学びに限らず、生き方についてのメッセージを広く発信したいということですね。最後に、これからの学びがどのように変わっていくかを聞かせてください。

「僕は分かりやすいように学びの風景を4つのシーンに分けています。『learning 1.0』は知識の伝達による学び。『learning 2.0』は何かをつくっていくプロセスの中での学び。『learning 3.0』は誰かに喜んでもらおうとする中で生まれる学びです。そして最後の『learning 4.0』は、コミュニティーを横切り、多様な場や人と出会うことで強烈な刺激を受け、既成概念を破壊されるような学びです。こうした学びによって自分自身の境界を広げ、絶えず不安定な気持ちと闘いながら進んでいくことが、クリエイティブであるために非常に重要だと思っています」

manabi_cycle_model

「プレイフルというのは、実は攻撃的でスピード感のある概念です。世界を変えるためにワクワク、ドキドキするスピリットなんです。誰も見たことのないものを見たい、つくりたいというパッションが世の中を動かすと信じています。新しいコンピュータ、新しい学校、新しい授業。まったく新しい世界を見てみたいじゃないですか。それらは改善じゃなくて革命、今までとは完全に別のものなんです。たくさんの人が楽しみながら自分の境界をどんどん広げていく、そういう世界になるようにLearning Revolutionを起こしていきたいですね!」

(文:荒木勇輝、写真:吉田亮人)

【プロフィール】
上田氏プロフィール写真上田信行(うえだ・のぶゆき)
1950年奈良県生まれ。同志社大学を卒業後、セントラルミシガン大学大学院、ハーバード大学教育大学院で学び、教育学博士(Ed.D)を取得。ハーバードでは幼児教育番組「セサミストリート」や学習環境デザインの研究、モチベーションの研究を行う。帰国後は大学で教鞭をとりながら、さまざまな場所で先進的な学習環境やワークショップをデザインしてきた。著書に『プレイフル・シンキング』(宣伝会議、2009)、中原淳氏との共著『プレイフル・ラーニング』(三省堂、2013)などがある。
banner3_1


YOU MAY LIKE