「良い幼児教育」とは何か〜小竹めぐみ氏に聞く


小竹さんインタビュー写真

待機児童の増加や保育士の確保をめぐる議論の広がりや、ノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・ヘックマン氏が幼児教育の重要性を説いた『幼児教育の経済学』が出版されたことなどで、国内で幼児教育への注目度が高まっている。eduviewでも、幼児教育の将来についての議論が深まるように、実践者や研究者へのインタビューに力を入れていきたい。前回のインタビュー記事「良いおもちゃとは何か」に続いて、今回は保育士でもあり起業家でもある、こどもみらい探求社共同代表の小竹めぐみさんに、より良い幼児教育のあり方について聞いた。

 親子で五感を豊かにする「おやこ保育園」

ーーこどもみらい探求社が運営している「おやこ保育園」はどのような内容ですか。

「文字通り親子で参加する保育園で、0歳から3歳未満のこどもと親を対象に、全10回・約半年間のプログラムとして開催しています。関東ではすでに5期目に入っており、毎回約10組の親子が参加しています。プログラムの内容としては、午前中はこどもが主役の時間です。簡単な手遊びをしたり絵本を読んだりしてから出席確認をし、その後『かたち』や『いろ』といったテーマに沿った探求遊びを行います」

「その時、大人は手や口をなるべく出さずに、こどもが主体となれるよう、オリジナルで開発した『観察シート』を手に観察をしていきます。もちろん、笑いかけたり気持ちに共感したり…といった反応は大事にしていますが、大人がすでに持っている概念を必要以上に押しつけず、こどもが自ら出会っていくプロセスを大切にします。その後、その日のテーマに沿ってお散歩をし、みんなでお昼ごはんを食べます。午後は大人が主役の時間です。親が1人の人間に立ち戻って対話をする『ペアレンツ・ダイアログ』を行い、こどもたちは探求遊びを続けます」

ーー0歳児も受け入れると、運営面で大変なことが多いのではないですか。

「子育てやこどもに興味を持ち、活動の趣旨を理解してくださる方に『おやこパートナー』として参加してもらっています。もちろん、走り回りたい3歳の子と動けない0歳の子がぶつかったら危ないですし、0歳の子は誤飲も危険です。そのあたりは大人全員で協力しあって、見守ります。一方で、例えば段差などはあえてなくそうとはしていません。『ここはあぶない』ということを感じて、こどもたちが自分で危険を見つけられるようになってほしいからです」

「日本では0歳児に対して『まだ早い』という言葉が出てくることが多いですが、0歳の間は、多様なものに出会って吸収するのにすごく良い時期だと思っています。色々なものを見て、聞いて、ふれて、食感を覚えて、香りを知って…五感を豊かにするには、体も心もやわらかいこの時期に、家の中でも外でも『出会い』や『経験』をたくさんさせてあげて欲しいと思っています。それに、この時期はこどもの日々の小さな成長をみんなで喜び合うことができます」

ーーなぜ「五感」を特に重視されているのでしょうか。

「以前は高校生向けに講演をする機会が多くて、その中でやりたいことや好きなことを聞いた時に、『わからない』と言う生徒さんが多いことがとても気になっていました。小さい頃はいつでも何かしらを見つけて興味を持っていたはずなのに、大人になっていくとなんでこんなに感性が隠れてしまうんだろうと。五感が研ぎ澄まされているほうが生きていて楽しい。大人にも、小さなこどもたちのように、本気で感じたり、味わったりできるようになってほしいと思っています」

ーーおやこ保育園での子どもと大人の関わり方について教えてください。

「大人が主役の時間」では親が一人の人間として本音で語り合えることを重視している

「大人が主役の時間」では親が一人の人間として本音で語り合えることを重視している

「親から離れられるこどもたちは、ひとりで、またはおやこパートナーの大人たちと一緒に遊びます。母親という立場を離れて楽しめるように、そこにいる間だけでも役割を代わるという感じですね。こどもがいると、どうしても生活がこども中心となり、母親や父親の”WANT”が大切にされないことが多いのですが、ここではこどもが主役の時間に加えて、大人が主役の時間があるのがユニークなところかなと思います。大人が主役の時間では、親同士が本音で話せるような環境づくりを大切にしています」

(次のページは 「いないいないばあ」はなるべくやらない


 




YOU MAY LIKE