「堀川の奇跡」は他校で再現できるか〜荒瀬克己氏に聞く


 

課題探究型授業の発表資料

 課題探究型学習には知識が必要

——堀川の奇跡を実現したノウハウは他の高校にも広げられるのでしょうか。

「堀川にはSSHや校舎の新設という恵まれた環境がありましたから他校で全く同じことはできませんが、同じ趣旨の取り組みは必ずできるし、意味もあると思っています。課題探究型の学習を成功させるポイントは大きく分けて2つあります。外部評価または内部での自己評価が適切にできるかどうかと、やれば何とかなるという思いを教員たちが持ち続けられるかどうかです」

「教員たちのチームワークも非常に重要です。堀川では『自立する18歳』という言葉や、生徒と教員が一緒に作った「堀川憲章」などで、育てたい生徒像を共有しています。色々な解釈ができるように、あえて曖昧な言葉を選びました。すべての教員が一枚岩になるのを目指すよりも、それぞれの教員が自分の役割を考える方が多様性のあるタフな組織になります。ただ、船の行き先は一方向であるべきです」

——京都の市立高校は9校あり、堀川以外では西京高校も課題探究型の学習を取り入れながら進学実績を高めていますね。ほかの学校の話はあまり聞かないのですが。

「ほかの学校にあまり広がらない理由は、語の定義を共有できていないところにあるかもしれません。課題探究型と一口に言っても、堀川と西京では異なっているように思いますし、他校でどのようにされているかを熟知しているわけではありません。堀川のように、受験を出口として捉えるのでなく入り口として考えるなら、課題探究型は積極的な受験指導とも言えます。学びの面白さとしんどさを経験していることは、大学での学びのモチベーションになり、それが受験勉強を支えるからです」

——課題探究型の学習は中学校にも広げられるのでしょうか。

「中学校でもやっていますが、課題探究型の学習のベースになるのは知識です。知識がないとテーマが漠然としますし、仮説も立てられません。例えば『環境問題に興味がある』というところから始めて、家の近くの川の水かさを毎日測定してみるといった具体的なテーマを決めるとしましょう。考えるのは子ども自身ですが、教員が材料を提供する必要があります。中学校だけでなく小学校でも、その発達段階の知識と経験でやれないことはないのですが、高校とはやり方が変わってきます」

インタビュー風景

 授業の遅れを許容せよ

——通常の教科学習に関して、堀川ではどういった工夫をしましたか。

「生徒の失敗で授業が遅れるのを許容するようにしました。あるクラスで理科の実験を行い、全員が失敗したことがあります。なぜ失敗したのかをみんな必死に考え、次の週にもう一度挑戦しました。結果として、最初から実験がうまくいったクラスよりも理解が深まり、長期的な記憶に残る学びになりました」

——06年に高校の教科書履修漏れが全国的な問題になった時、この問題だけを大きく取り上げるのは違和感があるという趣旨の発言をしておられましたね。

「堀川では、教科書で『参考』扱いのテーマを数時間かけて考えさせることもあります。例えばニュートンは、彼以前の力学から万有引力の法則をなぜ導けたのか。生徒が1人ずつ自分の考えを発表し、ほかの生徒にどんどん質問させるという授業をしています。学習指導要領には『教科書を全部終わらせないといけない』とは書いていません。授業が遅れるかどうかより、理解を深めることが重要です」

「あとは『とにかく子どもをほめるのが大事』という風潮にも違和感があります。親や教員は子どもに正当な評価をしないといけない。ダメならダメ、下手なら下手と言わないといけません。堀川では成績表がオール3なら良い方で、1や2もよくつけます。進学校と言われるようになり、中学校では成績がオール5だったというような子も増えました。入学したら真っ先に、自分が一番ではないということを知ってほしいんです」

(次のページは 教員に「専門外」を自覚させる

 




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