「食えるアーティスト」をどう育てるか〜椿昇氏に聞く


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小豆島のアートプロジェクト、あるいは京都・妙心寺退蔵院の「襖絵プロジェクト」をご存知だろうか。いずれもそこで生み出される作品が注目されているだけでなく、若手芸術家の成長の舞台になっているプロジェクトだ。これらのプロジェクトに関わる椿昇氏に、アーティストの育成についての考え方を聞いた。(*1,2)

 今ある道筋はクリエイティブじゃない

——自身も現代美術家でありながら、かつて中学・高校の美術教師を経験され、現在は芸大の教員を務めておられます。教育において最も重視していることは何ですか。

「僕のテーマは『自立』。個人にしても地域にしても、自分の足で立てる、バランスをとれるということが大事だと思っている。権力は個人の自立を妨げる。例えば大企業のサラリーマンは普通、腹の中で思っていても原発反対とか言えないでしょう。安倍首相の奥さんとか、小泉元首相まで言ってるのに。奴隷みたいなもんですよ」

——アーティストが自立するために必要なことは。

「まず食うとは何かを考えることやね。どうやったら働かずに食べていけるか、禅問答みたいだけど、僕は学生全員にそう言って考えさせている。前提として、親が大富豪なら無理して働かなくていい。誰かのヒモになれるならそれでもいい。働かなくて食える方法のコンサルティングで1人から1万円もらって、10人集めてもいいかもしれない。大事なのは、今すでにある道筋はクリエイティブじゃないということ。ギャラリーに作品を出して評価してもらうというのはアメリカから輸入した方法であって、全然クリエイティブじゃない」

「芸大でデザインを学んで、東京の会社に就職してイラストを書いているというのは誰でも想像できる。そうじゃなくて、『私が一号です』と言える仕事に就いてみろと。僕がやっているプロジェクトでは『お抱え絵師』とか『醤油ソムリエ』とか、そういう日本で初めての仕事が出てきている。滋賀県の山奥で、近所の人から野菜をもらいながら月1万円で暮らしているキュレーターもいる。幸せはいっぱいあるし、ご飯の食べ方もいっぱいあるということ。インターネットのおかげで良い情報はどんどん伝わるし、すき間で食うのは昔よりずっと簡単になったと思う」

(次のページは 教える側は自分の信じることを垂れ流せ


*1 小豆島・醤の郷+坂手港プロジェクト:瀬戸内国際芸術祭2013(〜11月4日)では、特産の醤油の容器8万個に様々な濃度の醤油を入れて並べた作品など、多数の作品を展示している。
ウェブサイトURL http://relational-tourism.jp

*2 退蔵院襖絵プロジェクト:無名の若手絵師が妙心寺退蔵院の方丈(本堂)の襖絵64面を描き上げるという、退蔵院と京都造形芸術大学の共同事業。
ウェブサイトURL http://painting.taizoin.com

 




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