「サドベリースクール」が追求する自由の形〜杉山まさる氏に聞く


東京サドベリースクールの日常風景。ゲームをしたり、お弁当を広げたり、子どもたちが様々な活動をしている

東京サドベリースクールの日常風景。ゲームをしたり、お弁当を広げたり、子どもたちが様々な活動をしている

 叱るという行為自体が存在しない

——モンテッソーリ教育やシュタイナー教育といった、他のオルタナティブスクールとの違いはどこにあるのでしょうか。

「それらの教育を私が深いところまで知っているわけではないですが、一般的な公教育と異なる性格を持つのは同じですし、そういった教育理念でスクールを運営されている方と交流することも多いです。違いの部分で言うと、サドベリースクールにはカリキュラムも学年も全くないという点が大きいと思います。カリキュラムがあるということは、やはりこれをやった方が良いという考え方があるということですから。ここではすべての活動には等しく価値があると捉えています」

——サドベリースクールは民主的な学校としても知られていますが、具体的にどのようなことをしていますか。

「民主主義にも色々な形があると思います。サドベリー・バレー・スクールには子どもたちとスタッフで構成する『司法委員会』という組織があって、メンバーから訴えがあれば子どもたち自身が作ったルールと照らし合わせて対応を検討します。ただ、私たちがやってみたところ、許容性のある日本的な文化の影響なのか、あまり合いませんでした。一方、北欧の公教育ではとことん話し合いで解決するという形をとっているところもあり、子どもたちと話し合って、それを取り入れたらうまく行きました」

——他の子の物を盗むなど、子どもたちが世間で言われる悪いことをした時も、叱ることはないということでしょうか。

「ないですね。基本的に何かトラブルがあればすべて話し合って解決します。一般的な学校のように先生が子どもを叱ることはないですし、先生が双方から話を聞いてジャッジするということもありません。叱るという行為は何らかの上下関係がある中で発生するものだと思います。ここでは子どもも大人も対等なので、僕はこう思うよ、と言うくらいです。それでもやはり大人の意見は子どもにとって影響力が大きくなってしまいがちなので、むしろそうしたことに気をつけています」

「もめ事は時々ありますが、それほど多くないです。感情のぶつかり合いというのは、劣等感を持っている人がいるから起きるのかもしれません。サドベリースクールではみんな濃密なコミュニケーションをとっていますし、良い意味でリラックスしているので、子どもたちが劣等感を持ったり、それが表面化したりすることが少ないのだと思います」

——子どもたちが学校の運営に参加するのも特徴的ですね。

「学校運営の方針を決めるスクールミーティグにおいて、子どもたちは大人と平等に1票の権利を持っています。もっとも、うちでは多数決よりも話し合いが先で、リビングのミーティング用テーブルの近くには『話し尽くすまで多数決はとらない』というルールを書いた紙が張ってあります。このルールも子どもたちと話し合って決めました。保護者の皆さんにも、スクール運営上の重要なことを決めるミーティングに参加してもらったり、運営団体の役員になってもらったりしています」

——学費の決定まで子どもや保護者に委ねてしまうと、ビジネスとして成立しにくいのではないですか。

「サドベリースクールがお金になるなら色々なところが参入していると思いますし、子どもの教育の場ですから、経営の効率だけを求めていないことは確かです。ただ、子どもや保護者が決定権を持つことが学費を下げる方向に働くかというと、そうではないと思います。自分自身が運営に関わることで、利益が出ないと回らないということも理解してくれるからです。みんなで集まった時に、子どもたちから『しっかり利益を上げていきたいね』という話が出ることもあります」

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