アクティブ・ラーニングをどう評価すべきか〜西岡加名恵氏に聞く


西岡先生インタビュー写真

次期学習指導要領改訂に向けて、文部科学省が初等・中等教育(幼稚園・小学校・中学校・高校)での「アクティブ・ラーニング」(能動的な学習)を強く推進する方向性を打ち出している(*1)。アクティブ・ラーニングには、生徒たちの知識・技能を定着させるだけでなく学習意欲を高める効果も期待されているが、導入にあたって課題になりそうなのが、センター試験のような筆記テストなどとは違って学習活動の結果を評価するのが難しいことだ。教育評価の専門家として知られる京都大学大学院教育学研究科の西岡加名恵准教授に、アクティブ・ラーニングを行う際の評価のあり方について聞いた。

 はいまわるだけのアクティブ・ラーニングにならないために

——アクティブ・ラーニングという言葉があらためて注目されていますが、そもそもどういった学習をアクティブ・ラーニングと呼ぶのですか。

「アクティブ・ラーニングの学術的な定義では、『一方的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習のこと。能動的な学習には、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴う』(*2)とされています。例えば小学校の国語や社会の授業の中で日常的に行われる生徒同士の話し合い活動などもアクティブ・ラーニングの1つと言えますし、この言葉にはかなり広いものが含まれると考えて良いでしょう」

——どのような背景から学校現場でアクティブ・ラーニングが広がってきたのでしょうか。

「初等・中等教育改革について実際に広がっているアクティブ・ラーニングについて見れば、大きくは2つの流れがあると思います。1つは、2004年の『PISAショック』(*3)を受けて、2008年の学習指導要領改訂では読解力の向上のために『言語活動の充実』が掲げられたことです。これによって話し合い活動など相互のコミュニケーションがさまざまな授業に取り入れられるようになりました。もう1つの流れとして、1998年改訂の学習指導要領において、『総合的な学習の時間』が導入され、探究的な学習が広がったことが挙げられます。近年では、SSHやSGH(*4)が導入されるなど、高等学校でも探究的な学習を推進する動きが強まっています。中でも、たとえば、商店街の活性化のために商品開発に携わるなど、現実社会の問題解決に参加する学習は、もっともアクティブな学習と言えるかもしれません。地域社会への貢献の中で行われる学習活動のことを、サービス・ラーニングと言います」

——次期学習指導要領の改訂に関する議論の中でのアクティブ・ラーニングの位置づけについて、どのように見ていますか。

「文部科学省が強く推進する方向性を打ち出しており、現場にもかなり急速に浸透していくと予想しています。アクティブ・ラーニングという言葉は、これまで日本では主に高等教育(大学)の改善に関わる文脈で使われていました。大教室での一方通行の講義でないものをいかに実現するか、ということです。小学校ではもともとアクティブ・ラーニングを当たり前のように行っている学校も多いでしょうから、今までやっていたことを変えないといけないのか、と混乱する可能性もあります。また、活発に話し合われているからといって生徒たちの理解が深まっているとは限りません。戦後新教育の時代にも『経験主義』が掲げられましたが、活発に動くこと自体が目的化してしまい”はいまわる経験主義”と揶揄されました。今回もはいまわるだけのアクティブ・ラーニングになってしまう可能性があり、少し心配しています」

——アクティブ・ラーニングでは選択回答式の筆記テストなどと違って評価が難しいように思いますが、生徒たち一人ひとりの学びの結果をどう評価するのでしょうか。

「現行の学習指導要領では、知識や技能を活用して課題を解決するために必要な『思考力・判断力・表現力の育成』が重視されており、それらは公教育におけるアクティブ・ラーニングの主な目的と言って良いでしょう。この目的が本当に達成されているかを見極めるためには、評価の方法をよく考えないといけません。さらに、思考・判断・表現と言っても、全国学力テストのB問題(*5)のようなものと、探究型の学習とでは、求められるレベルが全く違う点に注意が必要です。知識や技能を使いこなす(活用・応用・総合)することを求めるような評価方法のことを、『パフォーマンス評価』と言います」

(次のページは 学習意欲の向上につながる「本質的な問い」


*1 文部科学省「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1353440.htm
*2 溝上慎一「アクティブラーニング論から見たディープ・アクティブラーニング」(松下佳代編著『ディープ・アクティブラーニング』勁草書房、2015年、p.32)より
*3 PISAはOECD(経済協力開発機構)が3年ごとに実施している各国の15歳を対象にした学習到達度調査で、主に読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野からなる。2003年の調査(公表は2004年)で日本の順位が急落し、教育関係者に衝撃を与えたことを「PISAショック」と呼ぶ。なお、2006年以降の調査では日本の順位は改善傾向にある。
*4 SSHはスーパーサイエンスハイスクール、SGHはスーパーグローバルハイスクールの略称。前者は先進的な理数教育に取り組む高校を文部科学省所管の独立行政法人、科学技術振興機構(JST)が支援する事業で、後者はグローバル・リーダーの育成に重点的に取り組む高校などを文部科学省が支援する事業
SSH https://ssh.jst.go.jp SGH http://www.sghc.jp
*5 全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)ではA問題で基礎的な知識が問われるのに対して、B問題で知識の活用力が問われる。例えば小学6年生の国語では、複数の資料を読み取って必要な情報を収集・整理し、一定の字数制限のもとで回答を自由記述するような問題が出されている。

 




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