「住職の学校」に見るニッチ教育の可能性〜松本紹圭氏に聞く


 仏教はリーダーシップに通じる

ーテキストやファシリテーションは2年間でどう改善しましたか。

「1年目にかなりプログラムを作り込んだので、大幅には変わっていません。ただ、最初は強く押し出していた『経営』という面を、今はそれほど強調していないということは言えると思います。アーリーアダプター、もしくはイノベーターに近い人たちは刺激を求めてやって来ますが、これからはやや保守的な層にも裾野を広げていかないといけない。基礎にはあるのは経営学ですが、それをお寺という特定のジャンルに向けて翻訳する私たちの能力も高まってきましたし、テキストではお坊さんがより親しみやすい言葉づかいを心がけています」

未来の住職塾のテキスト

未来の住職塾のテキスト

——全5回で受講料を12万8000円(+消費税)としていますが、料金設定についての考え方は。

「年間5回のプログラムですが、1回が5〜6時間で予習・復習もあるので、一人あたりの学習時間はかなり長いと思います。これだけニッチなテーマなので対象になる市場は小さいですし、そういったものは値段が高いですよね。専門書と同じで、買ってくれる人が少ない製品やサービスはそうしないと成り立たないですから。ただ、セミナーのクオリティーには自信を持っていますし、経営について学びたい社会人向けのプログラムとしては決して高くないと思います」

——経営をテーマにすることについて、他のお坊さんからの批判はありましたか。

「経営=金儲けだろうとか、誤解する方はやはりいらっしゃいますね。受講した方から批判が出てきたら問題ですが、食わず嫌いは仕方ないと思います。プログラムの内容についてはお寺の使命などの本筋から外れない、むしろ本筋に回帰していくことを常に意識していますし、誤解を解くための努力もしています。一方で、過去の受講生をはじめとして応援してくださる方も多いです。お寺のあり方はこのままではいけないと思っている、カリスマ的なお坊さんたちも応援してくださっています」

——松本さんはお坊さんがリーダーシップを身につけることの重要性も説いていますね。

「仏教そのものが人の可能性を開いていく教えだと思うんです。単純な能力開発ではなく自分を手放す、自分へのとらわれから自由になることによって新たな生き方が得られるという意味です。これは西洋的なリーダーシップ論とも実は通じるものです。俺についてこいというタイプの人でも、包容力や無私の精神を持っていて、良いリーダーと言われる場合がありますよね。宗派によって説き方のトーンは違いますが、仏教というのはそういった性質、人格を開いていく教えだと思います」

——住職塾の受講生に「仏教とは何か」「お寺の存在意義は」と問われていますが、松本さん自身の仏教観はどのようなものですか。

「私にとって仏教は特別なものではないです。生きるとは何なのか、私とは誰なのか、ということを問い続けることだと捉えています。それが人によっては仏教だったり、人によっては別のもの、例えば哲学だったりするのでしょう。お寺はというと、日本において人を育てる、人間性を磨く場として機能してきたものだと思います。私はそういった役割を今こそお寺に取り戻してほしいと考えています」

(次のページは 「自分は死ななきゃいけない」という学び

 




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