変わり者だった僕が社会起業家になった理由〜今井紀明氏に聞く


 

 「NSR」の考え方を広めたい

——2012年にNPOを立ち上げて、1年目の事業はどういった状況でしたか。

「1年目は収益的に厳しくて、僕の給料も月5万円にしていました。ある通信制高校でキャリア教育プログラムを採用してもらったんですが、ほかの学校には広がりませんでした。僕たちが業界のことを知らなかったことも大きいですね。今年は実績が認められ、パッケージができたことで採用してもらえるようになりました」

——2年目からは収益の面でも軌道に乗ってきたのでしょうか。

「軌道に乗っているとまでは言えませんが、道筋は見えてきました。現在の収入の半分くらいが事業で、残り半分は寄付です。事業は通信制高校向けのほかに、大学・専門学校向けの中退予防コンサルティングをやっています。去年は高校でのノウハウを活用して、大阪のある専門学校の中退率を27.5%から8%に下げることができました。今後、この事業は伸ばしていきたいと思っています」

——NPOのスタッフにも一定水準の給与を払える状況になりましたか。

「増えたと言っても一般企業の新卒給与より低いですから、まだまだこれからです。休みやすい制度があるとか、どこでも働けるとか、いいベンチャー企業を見学させてもらうと福利厚生面の環境づくりがすごいと思います。NPOは儲からないというイメージが強いので、変えていきたいですね。僕が色々なところで講演しているのはそのためでもあります」

——企業で言うCSRにあたる「NSR(NPOの社会的責任=Social Responsibility)」についても発言されていますね。

「これはすでに行っている団体も多いですが、D×Pでも、事業の一部を無償化する、他の団体にノウハウを伝えるといったことをやりたいです。あとは、NPOのほとんどが寄付をもらうばかりで自分では寄付をしないという状況にも違和感がありますね。国が担えない課題を担うのがNPOの役割ですが、1つのNPOだけでは社会問題は解決しません。様々なNPOが協力することで、結果的に社会が変わっていくのだと思います。そのNPOの目指す社会に共感し、投票するという気持ちで、僕は現在6団体に定期的に寄付をしています」

——ストイックな今井さんから見ると、ほかの教育系NPOの姿勢に物足りなさを感じるということでしょうか。

「いえ、それぞれの団体のスタンスがあって良いと思います。ただ、伝えたいことがある時は、僕は行動で示したい。自分にとって冒険だと思うことは何でもやってみるのが僕のスタンスです。今年はフルマラソンにも挑戦しましたし、挑戦し続ける自分の姿を高校生たちにも見せたいと思っています」

——社会起業家を目指す大学生からもよく質問を受けると思いますが、どんなメッセージを送っていますか。

「人によっては学生の間に起業した方が良い場合もあるし、一度サラリーマンを経験した方が良い場合もあるでしょうね。僕自身は、サラリーマンとして営業を経験させてもらったのは良かったと感じています。ただ、起業する人は周りから止められてもするものだと思います。自由に働けるので手法としては簡単ですが、お金の面でしんどいのは間違いない。僕から積極的に起業を勧めることはなく、やりたければやってみたらという感じですね」

——最後に、今後の団体の方向性について教えてください。

「僕たちの活動のゴールは、一人ひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会です。そのためのプログラムが通信制高校にはなかったので僕たちがやっています。大学や専門学校を中退してニートなどの困難な状況になってしまう生徒もいるので、中退予防のコンサルティングを始めました。ゴールに到達するために、全日制高校や定時制高校で授業をすることもあるかもしれませんが、今ある2つの事業はこれからもブレずにやっていきます」

(文:荒木勇輝、写真:吉田亮人)

【プロフィール】
今井氏プロフィール写真
いまい・のりあき
1985年北海道生まれ。立命館アジア太平洋大学を卒業後、大阪の専門商社に勤務。2010年3月に任意団体「Dream×Possibility」を設立する。12年春に退社し、D×PのNPO法人格を取得。現在、同団体の共同代表を務めながら、講演で全国を飛び回っている。
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